2009年02月18日

橋本紡『猫泥棒と木曜日のキッチン』新潮文庫

猫泥棒と木曜日のキッチン 自分の生き方に誇りを持って「それでいい」「それでかまわない」と言えたらどれだけ幸せだろう。辛いことがあっても、理不尽なことがあっても、自分で考え、自分で行動し、納得いくまでとことんやり尽くした結果、言えるものなのだろうか。ここでいつもの私なら、「まだ言うことのできない私は、もっとやるべきことがあるのだろう」とでも書くのだが、なぜだか今は不思議とそんな気分ではない。ほんの少しだが、「それでいい」「それでかまわない」と言える気がするのだ。意外と自分を好きになり始めているのかもしれない。いい兆候だ。こんな自分に気づかせてもらっただけでも、この作品の価値は私にとって大きい。 Amazon


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2009年02月17日

内田樹『子どもは判ってくれない』文春文庫

子どもは判ってくれない 「大人」の話し方、考え方とは何かを教えてくれる本。哲学ほど小難しくもなく、宗教ほど非論理的でもない。わかりやすく、それでいて高級。読む価値は大いにあると思う。中でも気に入った言い回しを挙げてみる。―「結論を急ぐ」ということと「正解を出す」ということはまったく違う。(中略)「正解がわからない」というのだって立派な「結論」だし、「私は間違っていた」というのだって立派な「結論」である。―人生、そうそう簡単に「正解」が見つかるものではない。しかし、「今はこう考えている」という認識を自分の中に持つことは、その後の行動を決める上で非常に重要だと思う。その「結論」の更新があって、初めて「正解」が見えていくのではないか。 Amazon
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2009年02月12日

俵万智『プーさんの鼻』文春文庫

プーさんの鼻 俵万智と歌との間に子どもという新しい存在が介在し、さらに広がりを見せる三十一文字の言葉の世界。その表現は現実を見つめに見つめ、より具体的に、よりシンプルになっている気がする。たとえば「あんぱんまんの顔がなくなるページありおびえつつ子はしっかりと見る」という歌。ここには作者の気持ちは一言も表現されていない。目の前の対象を捉えているだけだ。しかし、子どもの怖いもの見たさという機微が存分に伝わってくる。これ以上もこれ以下もないぎりぎりの表現だと思う。「母」に対するもう一つの不在をにおわせる歌の数々も、強さと罪悪感が伝わってきてよい。 Amazon
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藤原和博 重松清 橋本治『人生の教科書 情報編集力をつける国語』ちくま文庫

人生の教科書 情報編集力をつける国語 杉並区立和田中学校校長時代の「よのなか科」「夜スペ」といった取り組みで知られ、平成二十年度から大阪府特別顧問となった藤原和博が編著の本ということで読んでみた。この「まあいっちょ読んでやるか」という姿勢が素直な享受を大いに妨げることはわかった上で、だ。氏の方法は、プレゼンや議論を繰り返すことにより、論理的思考力を鍛えるというところに力点が置かれている。この方法は、「新しい学力」が叫ばれるようになってから旧態依然の講義形式の授業に対するものとして飛躍的に取り入れられたものである。しかし、もうこれ自体が新しいと言えなくなってきたばかりか、「正しい」とも言えないようだ。講義型にしろプレゼン・議論型にしろ、それを行っている教師はそれぞれ理念を持ってやっているのであり、ましてや「学力」などという目に見えないものを相手にしている限り、どちらが有用で正義かなど判断しようがない。大切なのはどちらを採用するにせよ、教師も生徒も熱意を持って臨むということではないだろうか。 Amazon
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2009年02月01日

宮淑子『先生と生徒の恋愛問題』新潮新書

先生と生徒の恋愛問題 内容は書名の通りである。それに関わり、処分された立場、処分する立場、処分を免れた立場、関係がうまくいき結婚にまで至った立場。様々な当事者から取材をし、問題点を探っている。それが解決策にまで至らないのは、それこそ様々な立場があるからなのだが。例えば、恋愛そのものについて、幸福追求権にのっとって自由だと解釈する者もいれば、非対等な関係だからパワハラにあたると解釈する者もいる。ただ、そこに性的関係が絡んでくると、明確な規定のない「わいせつ行為」にあたり、処分が待っている。これは同意如何ではなく、行為そのものが処分の対象となるというのが、処分する立場の主張するところだ。このように、複雑に論点が絡み合って、なかなかまとまらないのがこの問題。ただ一つだけ言えるのは、数多あるケースを十把一絡げに論じてしまうのは、それこそ多様性を無視した乱暴な扱いということになってしまうということだ。個々人の事情を鑑みた丁寧な対応が求められると思う。 Amazon
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森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』角川文庫

夜は短し歩けよ乙女 裏表紙には「キュートでポップな恋愛ファンタジー」とある。これを読んでどういう話を想像されるだろうか。ほのぼのとした甘い恋の物語?胸にキュンとくる言葉が散りばめられた初恋譚?それとも「剣」と「魔法」の世界で育まれる勇者たちの愛情?馬鹿を言ってはいけない。この作品に登場するのは、「変」と「阿呆」だけだ。後輩の女性に恋焦がれるも、妄想と突飛な行動しかできない先輩。その後輩も愛らしく、先輩が惚れてしまうのもわかるが、どことなく天然で、抜けていて、発想が常人離れしている。なんですか、「おともだちパンチ」って。そして、周りを取り巻く謎の人物たち。まともな人物なんていやしない。しかし、その魅力に取り憑かれたが最後。なかなか足を洗うことができない。ようこそ、森見ワールドへ。 Amazon
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浅倉卓弥『四日間の奇蹟』宝島社文庫

四日間の奇蹟 小説としての構成要素をこれほどまでに兼ね備えた作品が他にあるだろうか。それぞれの登場人物が背負った背景。とある共同体の日常の姿。予期せぬ展開と衝撃。丁寧な心理描写。そして、現実に起こるか起こらないか絶妙のバランスで描かれる奇蹟。それらがうまく混ぜ合わさり、感動がじわじわとさざ波のように胸に押し寄せる。思わず目頭が熱くなってしまう場面も多々あった。人生の中で起こる理不尽な出来事。なぜ自分だけがと運命を呪う弱さ。しかし、それがなければ気づけない真理。幸せ。誰かを深く想い、その人のために生きられることはそれだけで尊い。私に関わる全ての人とこの気持ちを共有したい。私の本棚で輝く珠玉の一冊。 Amazon
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