2009年05月28日

渡辺淳一『ラヴレターの研究』集英社文庫

ラヴレターの研究 明治から昭和初期に活躍した文学者や偉人たちが書き綴ったラブレターをとりあげた一冊。その人物や社会の背景も詳しく解説し、ラブレターの持つ意味をさらに深めてくれている。授業で『羅生門』を扱うので、芥川龍之介に関するものが読みたかったというのと、以前職場の先輩が薦めていたというのとで手を伸ばしてみたが、かなり読み応えがあり満足だった。そもそもラブレターというものは、送る相手以外には読まれないことを前提としているものであり、それを読むということ自体、よろしくないことをしているような妙な感覚。それでいて、表現卓抜な文学者たちのものとあれば、こちらまでくすぐったくなるような、胸が熱くなるような、不思議な気分になる。これほどまでに文章に溢れ出る情熱をこめられるのは羨ましいなとも。何よりよかったのは、最後には作者が、高校時代にもらったラブレター、書いたラブレターを公開していることだ。これが他人のものを紹介するだけでは趣味が悪いで終わるところだったが、そのあたり心得ているところが、誠実にラブレターと向かっている感じがした。ラブレター、自分にももらって心があたたまったもの、日夜悩んで書き上げたものの渡せなかったもの、色々とある。本書からほとばしる熱い気持ちに負けず、臆せず書いていきたい。 Amazon


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2009年05月23日

あさのあつこ『ガールズ・ブルー』文春文庫

ガールズ・ブルー 青春なんていう陳腐な言葉でかたづけたくはないけど、見事に青春を描き切っている。落ちこぼれ高校に通う女子高生の、諦めない、負けない、くじけない、めげない気持ちがあふれている。私の勤務校の近くにも「最底辺」「困難校」と呼ばれる高校があり、名前を出すと眉をひそめられる存在なのだが、実際に特定の個人と関わってみるとそんなことはあまり気にせず、毎日を一生懸命に生きている。偏見、世間体、ステレオタイプ。括るのはたやすい。 Amazon
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万城目学『鴨川ホルモー』角川文庫

鴨川ホルモー 森見登美彦と同系列という情報をどこからか得て、ずっと読むのを楽しみにしていた万城目学。読んでみて感嘆。「最高!!」の一言に尽きる。京都が舞台でなじみのある地名のオンパレードということはもちろん、「ホルモー」なる謎の競技も興味をそそられる。陰陽五行説や「神なるもの」が現代にまで細々と息づいているという珍妙さと、それを至って真面目に、本気で取り組むサークル。アホである。しかし、そのアホさ加減が絶妙に面白い。そこに人間関係、恋愛感情が絡み合い、ストーリーは厚みを増してくる。あまりに面白かったので、読了の翌日に映画も観た。ところどころ展開の違う場面があったけれども、「ホルモー」のシーンは映像でしか味わえない臨場感があり楽しかった。号令のときの構えなど活字では面白さは伝わらなかっただろう。早良京子の性格が徐々に明るみに出てくるのには爽快感と失望感とが入り交じった気分になったが。是非、一読をおすすめします。 Amazon
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2009年05月20日

岩波書店辞典編集部編『四字熟語ひとくち話』岩波新書

四字熟語ひとくち話 さまざまな四字熟語を取り上げ、それに関する雑感をしるしたもの。具体的にどういった場面に使われるのかを紹介したものが多い。もう少し語源に絞った話題を期待していたが、これはこれでなかなかよかった。特に目を引いたのは「他山之石」に関する項。「よその山から出た粗悪な石も自分の玉を磨くのに利用できるの意から、他人のつまらぬ言行も自分の人格を育てる助けとなりうることのたとえ。」が本義だが、なんと『広辞苑』の初版本序文で、「フランスの大辞典リットレないしラスース等の名著……を他山の石として」と書いているらしいのだ。このエピソードは、権威とは何かを深く考えさせてくれる。非常に面白かった。 Amazon
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芥川龍之介『羅生門・鼻・芋粥・偸盗』岩波文庫

羅生門・鼻・芋粥・偸盗 授業で『羅生門』をやるために久々にこの短編集を読み返してみたが、やはり新たな発見はあるもの。『鼻』と『芋粥』から「人間らしさ」を読み取ることができた。コンプレックスや欲望といったものは不必要なものとして切り離されるべき対象とされがちだが、実はそれらがあってこそ人間らしいのかもしれない。うまく付き合っていけるかどうかの問題で、丸ごと否定してしまうのも味気ない。先日、職場の飲み会で先輩が「最近、仕事行きたくないなぁって思うんです」と愚痴っていると、そのさらに先輩が「人間として自然。いいことだ」と返していたのが印象的だった。ありのままを受け入れる。幸せに生きるヒント。 Amazon
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