2009年12月29日

大伴茫人『クイズでわかる百人一首』ちくま文庫

クイズでわかる百人一首 勤務校では、冬休み明けにクラス対抗の百人一首大会がある。今までは担任を持っていなかったので、ただの学校行事だったが、今年は違う。やはり自分のクラスを勝たせたい。あれやこれやと方策を練ってみたりはしている。とはいえ、この本を読んだからといって、生徒が歌を覚えることとは直結しない。単なる興味本位で読んでみただけだ。百人一首の全ての歌を解説した本。大意があり、文法事項に基づいたクイズがあり、あまり目新しい印象もなく、言ってみれば受験参考書の域を出ていない。ある程度の知識がある人間としては物足りなかった。以前読んだ『絢爛たる暗号―百人一首の謎を解く―』の方が私の知的好奇心を刺激してくれてよかった。 Amazon


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内田樹『こんな日本でよかったね−構造主義的日本論』文春文庫

こんな日本でよかったね−構造主義的日本論 ブログの記事の中から選りすぐりのものを収録した形となっているので、内容は雑多で統一性はない。しかし、内田樹という人が色々な問題をどのように考えるのかが俯瞰的にわかるという意味ではなかなか面白い一冊。なるほどと思ったのは「もし、子どもたちに学びを動機づけたいと望むのなら、教師自身が学ぶことへの動機を活性的な状態に維持していなければならない。」という記述。確かに、教師は教師というだけですでに子どもに何かを教える存在だ。その当人が「勉強はつまらない」と言っていたら、子どもは勉強への意欲を失ってしまうだろう。幸い、私はまだ様々なことへの知的好奇心を失っていない。これがなくなったとき、そのとき教師として、人間としての真価が問われるのだろう。 Amazon
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2009年12月28日

重松清『日曜日の夕刊』新潮文庫

日曜日の夕刊 この短編集に収められている『卒業ホームラン』を授業で扱ったので、ついでに読んでみた。多くの作品に共通するテーマは「家族」だ。当たり前に存在するがゆえに、あるべき姿をなかなか見いだしにくい難解な所属集団。「これでいいんだ」と構成員全員が納得できていればそれが「理想の家族」なんだろうけど、なかなかそうはいかない。ぶつかり合って、避け合って、どこかざらざらした感触を感じながら生きている。作品の中では最後には柔らかな風が吹くようにうまく収まるが、現実は甘くはない。その甘くなさを何とか中和するために重松清が贈り物をしてくれているのかなとも思えた。 Amazon
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内田樹『先生はえらい』ちくまプリマー新書

先生はえらい ちくまプリマー新書は、高校生を対象としたものである。そこへきてこのタイトル。しかし、説教くさく「お勉強しなさい」とか「言うことを聞きなさい」というようなものではない。内田樹らしく、非常にアイロニカルな論理で攻めてくる。大人でも充分読み応えのある仕上がりになっている。さて、ではどういうことを高校生に向けて発信しているのか。それは「えらい先生などいない」ということだ。「ん?」と思われた方も多いだろう。でも、そうなのだ。ある人にとって「この先生はえらい」と思って初めて先生はえらくなる。つまり、師弟関係というのは常に一対一であり、弟子は「師」と認める人からは無限の教えを得ることができるが、「師」と認める人がいなければ何も学べない。ここには理屈などなく、どんなに凡庸な人でも誰かから認められれば「師」となり得る可能性が残されているということを示唆している。だからといって、現場で働く教育者の立場としては何をどうするということもできないのだが。学びの原理というものはよくわかった。 Amazon
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東野圭吾『眠りの森』講談社文庫

眠りの森 大学を卒業した加賀恭一郎は、教師という経歴を経て、刑事となる。その彼がとあるバレエ団で起こる不可解な事件を解明する作品。元刑事だった父親との関係や、卒業と同時に恋人と別れたその後の恋愛事情もうかがえ、だんだん人物設定が固まっていくのがわかる。こういうのがあると、前作から続けて読んでいてよかったと思うのだ。この作品も、バレエ団という特殊な集団、とりわけバレリーナという芸術家の特徴をうまく活かしており、取材を重ねに重ねているんだろうなと思わせる。素材をうまく調理するには才能も必要だろうが、その素材を調達してくるのは地道な努力しかない。作家という仕事もやりがいと困難を併せ持っているのだろう。 Amazon
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東野圭吾『卒業』講談社文庫

卒業 私はシリーズ物は最初から読まないと気が済まないたちで、村山由佳の「おいコーシリーズ」も、もちろん「キスまでの距離」から読んでいる。さて、本作は東野圭吾のいわゆる「加賀恭一郎シリーズ」と呼ばれるものの第一作である。特定の人物が異なる作品に登場するというだけで、続き物ではないが、それでもやはり作品が発表された順に読んでしまう。内容は、いつも通り様々な要素が複雑に絡み合って重厚な仕上がりになっている。特に、剣道や茶道といった日本文化をうまく事件に取り入れているのが東野圭吾らしい。そこに卒業を控える大学生特有の、茫漠とした先行き不安感が融合している。ただのミステリーでは終わっていない。 Amazon
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江國香織『つめたいよるに』新潮文庫

つめたいよるに 友人がおすすめしてくれたので読んでみた作品。江國香織は何作か読んだことはあるけれど、これまでのものに比べ、子どもや老人が多く題材になっているような気がした。同年代の登場人物にはあまり感情移入できなかったのだが、年齢がかけ離れていると、もともと異質なる者という意識があるのか、意外とすんなりと物語に没頭することができた。全体を通して童話のような雰囲気がただよっていて、形容するなら「じんわり」「ふんわり」といった感じで、心あたたまるものが多かった。中でも「スイート・ラバーズ」と「晴れた空の下で」が気に入った。ともに老人の姿に主眼が置かれている。前者は、結婚を目前に控える女性が、祖父の死を通じて夫婦のあるべき姿を発見し、婚約者への愛を確かめる。後者は、すっかり痴呆が進んでしまった老爺がとっくに亡くなった妻との思い出を木漏れ日のような筆致で描く。真実は、実際に起こる出来事ではなく、その人の心の中にあるということを思わされた。 Amazon
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森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』祥伝社文庫

新釈 走れメロス 他四篇 中島敦『山月記』、芥川龍之介『藪の中』、太宰治『走れメロス』、坂口安吾『桜の森の満開の下』、森鴎外『百物語』を森見登美彦が現代風に書き直したらどうなるか。この斬新な試みに予想通りどっぷりと浸かってしまった。なにせ、どの作品も今までに読んだことがあり、そのどれもが私の貧弱な頭脳を刺激してくれる珠玉の作品だからだ。そしてもちろん森見登美彦が蘇らせたものも負けず劣らず刺激的だった。中でも一番面白かったのが『走れメロス』だった。私が森見登美彦に熱中するきっかけとなった『太陽の塔』を彷彿とさせるような、自意識過剰な大学生が繰り広げる荒唐無稽ドタバタ劇。桃色のブリーフ一丁で踊ることを賭けて邪知暴虐な図書館警察長官と戦うという設定。非常にくだらない。しかも、人質に取られている友人は主人公のことをこれっぽっちも信じていないし。この原作を裏からなぞるような感じがたまらなく痛快。興味のある方、原作を読んでからにしましょう。味わいが違います。 Amazon
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