2010年01月11日

内田樹『日本辺境論』新潮新書

日本辺境論 これも目から鱗の良書。日本人の本質として「我々は辺境に属しており、これは今後もどうすることもできない」と、心地よいくらいに断言してくれている。それは良い悪いの問題ではなく、その特徴を活かしていくことが鍵なのではないかと思う。その本筋とは反するかもしれないが、私の心に残ったのは、「正しさ」に関する、「私の正しさは未来において、それが現実になることによって実証されるであろう。それが世界標準を作り出す人間の考える『正しさ』です」という考え方。こう考えることができないのが日本人と著者は言うが、私の仕事においてはこれが大切なのではないかと思う。教育には様々な方法がある。学校の規則に忠実に沿うのか、ある程度の寛容さを持って挑むのか。それは生徒の実態や、学年団の考え方によって適宜選ばれるのだが、どれが正しいということはない。その方法が正しかったかどうかは、生徒が成長し、極端に言えば、生涯を終える時点で幸せを感じられたかどうかによってしか証明されないと思う。だからといって、手を抜いていいというわけではなく、信念を持って生徒と向き合わなければいけないとは思うが。自分のやり方に少し悩んでいたところ、少し光が差した気がする。 Amazon


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橋本紡『空色ヒッチハイカー』新潮文庫

空色ヒッチハイカー 高校三年生の少年が、夏休みに西へ西へとドライブに出掛ける。隣にはヒッチハイクで乗せたかわいい女の子。もうこれだけで妄想爆発、青春一直線って感じ。でも、この旅はそんな単純なものじゃなく、やはり「自分探しの旅」だったりする。旅の最後で出会うとある男性の生き方がかっこいい。頭脳明晰、運動神経抜群で、上り詰めるところまで上り詰めた。でも、それを捨てて、最果ての地に住んでいる。そこで生まれて初めて見つけたものは、「人より下手くそなもの」だという。そして、毎日が楽しくてたまらなくてわくわくしている。自分はそんなことを言えるような優秀な人間でもなんでもないけど、自分にとって無条件に楽しめるものがあって、それを誇りに思える人間になりたいなと思った。 Amazon
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米澤穂信『ボトルネック』新潮文庫

ボトルネック 現実離れした世界へと放り込まれるという点では、期せずして一つ前に読んだ『オーデュボンの祈り』と重なった。本作は、パラレルワールドが舞台。時間軸も同じで世界も同じなのだが、違うのは「僕」の代わりに見知らぬ「姉」がいるということ。その「姉」は「僕」とは何もかも違い、明朗快活な性格で、「僕」が望んでいた未来を何もかも手に入れていた。そんな事実を一つ一つ確認していくうちに「僕」は一つの真実を確信する。それは読んでからのお楽しみ。かなり重い真実だが、それしか道はなかったような気がする。自分の存在意義というものは、時に確認してはならないものなのかもしれない。 Amazon
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伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』新潮文庫

オーデュボンの祈り 職場の同僚や友人の数名が読んでいて、以前から気になっていた伊坂幸太郎。例に漏れず、デビュー作から読んでみることに。舞台は、現代日本でありながら、外界から隔絶された孤島。そして、魅力的な登場人物。未来が見えるカカシや、存在自体がルールであり、殺人も咎められない男、桜。その現実離れした中で次々と事件が起こる。ただ単に荒唐無稽なだけじゃなく、舞台と人物設定が見事に調和していて、浮遊感が心地いい。外界から突如この世界に放り込まれた語り手の伊藤は「狂気と慣れは紙一重」というようなことを言っているが、まさにその通りだと思う。戦時下が好例で、公算がない戦いだとわかっていながら、その場の「雰囲気」や「流れ」でなんとなく進んでいってしまう。当事者達はそれを狂気だとも思っていない。そうすることが当たり前かのように振る舞う。本書では、それに薄々気づいている何名かの人間が状況を打破しようと立ち上がる。読んでいる途中は不思議な感覚に囚われていたが、読後は爽快感があった。個人的には登場人物は、さきほども挙げた桜が気に入った。クールな中にも、一本筋の通った熱いものを持っていて、独自の美学を作り上げている。それでいて詩をこよなく愛するなんて、しびれる。 Amazon
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