2010年03月28日

島内景二『中島敦「山月記伝説」の真実』文春新書

中島敦「山月記伝説」の真実 中島敦といえば『山月記』。教科書会社と国語教員の思いがある限り、この繋がりが分断されることはないし、国民の頭から忘れ去られることもないだろう。私は『名人伝』や『文字禍』などの方が好きなのだが、それはまた別の機会に語ることにしよう。さて、その『山月記』だが、私は職業柄、触れる機会が多い。また、大学の友人がゼミで発表していたこともあり、一般の人よりは深く理解しているつもりだ。ただ、授業にしても研究にしても、個人的に作家論的な立場から述べるのは好きではないので、中島敦自身に対する理解はこれまで怠ってきた。それを補うのが本書である。中島敦の周りにどのような人が集まり、いかにして『山月記』が世に出たかを史料を交えて詳説してある。筆者の思い入れがやや強すぎるようにも思えるが、『山月記』から中島敦に興味を持った人には最適の本である。 Amazon


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江國香織『きらきらひかる』新潮文庫

きらきらひかる 周囲からすれば奇妙にしか見えない関係でも、当人たちにしてみればそれが普通であるということはいくらでもある。いや、むしろそんな関係でないと駄目だとも言える。この作品に登場する夫婦はアル中の妻と、ホモで恋人ありの夫。しかも、その恋人は妻公認であり、ちょくちょく二人の間に顔を出す。夫婦それぞれの両親は二人の関係を当然のように修復しようとする。しかし、修復などできるわけもない。なぜなら、壊れてすらいないからだ。ただ、夫婦は周囲の思いには敏感で、次第に傷ついて互いを信じられなくなってしまう。愛することの意味を透き通るような表現で描いた作品。 Amazon
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東野圭吾『私が彼を殺した』講談社文庫

私が彼を殺した 『どちらかが彼女を殺した』に続く、読者が推理するミステリー。前作と違う点は、容疑者が三人であることと、その三人による視点が入れ替わりながら話が進められていくこと。さらにやっかいなことに、偶然が重なり三人ともが自分が殺したと思い込んでいること。このあたり作者の巧みさが感じられる。今回も袋とじを破らなければ見当もつかなかったが、注意深く読むことによっておそらく犯人に辿り着いた気がする。この「気がする」としか言えないあたりが、この小説の歯がゆいところであり、醍醐味でもある。 Amazon
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東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』講談社文庫

どちらかが彼女を殺した 東野圭吾による異色の試み。殺人事件が起こり、その謎を解き明かしていくという点では普通のミステリーと変わらないが、この作品は、最後まで犯人名が明かされない。謎解きの手引きとして袋とじがあるが、ここでも重要な部分は伏せられているのが心憎い。読者も本当の意味で「推理」させられる小説なのだ。その仕掛けを知った上で読み進めていき、どうしてもわからないので袋とじも破ってみたが、それでも一筋縄ではいかない。動機や台詞といった不確定要素ではなく、現実の捜査がそうであるように、物的証拠を丹念に確認していかないと犯人は当てられないことになっている。もやもや感も含めて楽しめる人には是非お薦めしたい。 Amazon
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