2010年11月28日

中田永一『百瀬、こっちを向いて。』祥伝社文庫

百瀬、こっちを向いて。 珠玉の恋愛小説集。全四作からなるが、どれも正体や本性を意図的に隠したまま関係を続けるような設定になっていて、そこで生まれる感情に対する困惑や疑念をうまく描いている。「キャベツ畑に彼の声」では、覆面作家である国語教師と、彼の取材テープおこしをする教え子の女子高生が描かれている。彼女は作家の正体が彼であることに気づいていながら、密かな想いを募らせ、彼には彼で実はもっと大きな秘密がある。その事実に気づいたとき、彼女の心もまた大きく動き…。構成が巧みで、読ませる力がある。実はこの中田永一という作家自体が覆面作家という話があり、その事実もまた作品に味わいを加えている。 Amazon


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片田珠美『一億総ガキ社会「成熟拒否」という病』光文社新書

一億総ガキ社会「成熟拒否」という病 「打たれ弱さ」「他責的傾向」「依存」を特徴とする「成熟拒否」を考察し、その原因と解決策として「対象喪失」を挙げて、どのように生きていくべきかを探る良書。「人間には無限の可能性がある」「頑張れば何でもできる」と盛んに喧伝される現在において、逆に「できないのは頑張っていない自分の責任」という当然の考えも隆盛してきている。そしてそれを背負いきれない人間が責任を他者に転嫁するという構造も強固なものとなってきている。何事においてもそうだが、極端すぎる考えは危険で、「無限の可能性がある」という前提も、努力を促す上ではもちろん一定の効果があるが、それ一辺倒になってしまうのはよくない。ときには「頑張ってもうまくいかないこともある」というように柔軟に考えを変える必要もあるのではないか。私の近年のモットーは「中庸」だ。バランスをとって生きていきたい。 Amazon
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宮子あずさ『看護婦が見つめた人間が死ぬということ』講談社文庫

看護婦が見つめた人間が死ぬということ 現役の看護師が、その仕事の中で避けては通れない「死」についての考えをまとめたエッセイ集。曰く、「よく死ぬとはよく生きること」だという。人間として真摯に人生を歩み、誠実に人と関わってきた人が死ぬ間際というものは美しいが、そうでない人のものは見るに堪えないものがあるという。また、死を直前にして豹変する人や、家族の軋轢など様々なものが見えてくる。そこに仕事として看護師はどう関わっていくのか。私が進路指導する際にも心に留めておかなければならないことが多く得られた。是非、看護学校志望の生徒にも読んでほしい。 Amazon
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内田樹・名越康文『14歳の子を持つ親たちへ』新潮新書

14歳の子を持つ親たちへ このブログではおなじみ内田樹が、今度は精神科医と対談。高校受験を間近に控える14歳の子どもに焦点を当て、教育問題を探る一冊。メディアの垂れ流す無責任な論調の中では、「子どもが病んでいる」だと言われることが往々にしてあるが、二人は「それは間違いで、病んでいるのは親の方では?」と疑義を隠さない。公共の場での振る舞いなど、一番身近な大人である親を真似るのは当然で、親が未熟なままに子どもを持つから子どもが育たないのだ、と。親が子どもに過剰な期待をするから潰れてしまうのだ、と。子どもの発信しているシグナルを受信する感度が親にないから、子どもが病んでしまうのだ、と。至極真っ当な意見で、全面的に同意する。と同時に、自分も子どもを育てられる大人でいないといけないと固く心に誓う。 Amazon
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2010年11月27日

小松秀樹『医療の限界』新潮新書

医療の限界 司法が、政策が、メディアが、そして国民が、医療をよってたかっていじめている。その行為が受益者にとって結果的には不利になるとは知らずに、だ。特に国民の場合は直接的に医療を受ける者として、無知と無理解は許されない。患者から医療従事者への暴力や、自分本位の要求を突きつけるといったことが年々増加している。そこにきて医療費抑制や医療事故(過失ではなく事故である)に対する過剰な報道と、医療の置かれている状況は尋常ではない。医療の限界は、従事者の資質や能力が低下したために起こるものではなく、確実に外部から狭めていっているのだ。これは医療に限ったことではなく、教育でも同じことが言える。士気を低下させる要因だらけの仲、責任感だけに支えられて日夜働き続ける教員のいかに多いことか。国民のほとんどが当たり前のように利益を享受してきたからこそ、見えない問題がそこにはある。 Amazon
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